司法書士によるコラム

第12回 「遺言のススメ」

 今回のコラムは遺言についてお話ししたいと思います。

唐突ですが,皆様は遺言についてどのような印象をお持ちでしょうか?
私たち司法書士は,仕事柄遺言に触れることは度々ありますので特別珍しいものではないのですが,普通の生活を送る上では,ほとんど触れる機会もないためか,なんとなくイメージはつくけど詳しくは分からないという方が多いのではないでしょうか。実際に遺言の話をすると,縁起が悪いのであまり考えたくないとおっしゃる方もおり,遺言の話をタブー視しているような世の中の雰囲気があるように感じることもあります。

私たち司法書士は相続を原因とする不動産の名義変更の依頼を受けたときに,相続人の間で遺産分割協議がまとまらずに相続の登記ができないというトラブルに遭遇することがあります。そして,そんな時によく思うのが,もし遺言があればトラブルは回避できたのではなかろうか,ということです。

人が亡くなると,その人が有していた財産は相続人に相続される(承継される)ことになりますが,相続する人及び,相続する割合というのは法律で定められており,例えば,妻と息子2人を残した人が死亡した場合,妻と子2人の3人が相続人となり,相続の割合は妻が4分の2,息子2人がそれぞれ4分の1ずつとなります。単純に現金や預金といった分割することが可能な財産であれば,相続人間で相続の割合に応じて財産を分けることが可能ですが,土地や建物といった不動産が相続の対象となると,現金や預金ほど簡単に財産を分けることはできません。もちろん,不動産の持ち主は一人である必要はないため,相続分に応じて複数人で共有することも可能ですが,不動産を複数人で共有することは後々の権利関係が複雑になる可能性もあり,できれば避けたいところです。
 このような場合は,相続人の間で遺産分割協議という話合をしてもらい,その話合の内容に基づき名義変更の登記を申請することがほとんどです。先程の例の場合,親子3人の話合で母親が一人で不動産を承継するとまとまれば,母親一人の単独の名義とする登記手続をするといった具合です。法律で定められている相続の割合を変更することになりますが,相続人全員で話合が成立していれば,その話合は有効に成立し,手続上問題はありません。
  しかし,問題はこの話合は相続人の全員で行う必要があるという点です。仮に話合に協力しない相続人が1人でもいた場合,話合は成立せず,相続人が望むような登記手続は困難になってしまいます。

 大きな財産の移転のきっかけとなる相続は,親族間の大きなトラブルに発展する可能性をはらんでいるともいえます。もちろん,誰しも好き好んで親族間で揉めたいとは思っていないでしょうし,実際に揉めるケースはまれなのかもしれませんが,こういった事例の場合,生前に遺言を作成しておくことでトラブルが回避できる可能性が高いのです。
遺言の重要な役割として,生前に自己の所有する財産を誰に承継させるか決定できるという点があります。ですから,例えば,預金は長男に,現金は次男に,不動産は妻に相続させると遺言を残しておけば,分割協議を経ずに財産の分割がスムーズに行われる可能性が高くなるのです。

 しかしながら,そうはいっても,冒頭で述べたように遺言の内容は,自分が死んだ後のことを想定して作成するわけですし,さらに,誰しも,自分の親族が遺産分割で揉めることはないだろうと思っていることでしょうから,やはり,遺言のことを考えるのは縁起でもないと感じる方も多いことでしょう。
 あくまで,遺言は自分自身の意思で作成するものですから,作成を強制することは誰にもできませんが,せっかくの機会ですので,遺言に対する個人的な見解を紹介したいと思います。
 私は,遺言とは,ここでお伝えしたようにトラブルを回避する有効な手段であると同時に,自分の最後の意思を残された者に伝える手段でもあると思っています。例えば,愛する妻に住む場所だけは残してあげたい,介護で世話になった息子には少し多めに現金を残してあげたい等,残された者の生活を守るためや感謝の気持ちを伝えることができる手段として有効なものでもあるのです。
 人間である以上,いつか死は訪れます。これは誰も逃れられない事実です。しかしながら,これまで築いてきた財産の処遇や,残された者への思いがあるのであれば,その意思を伝えるための方法として遺言を作成しておく,そう考えれば少しは前向きに捉えることもできるのではないでしょうか。

最後に,もし遺言を作成する場合は,作成方法,記載内容について法的な問題がないか十分に検討する必要がありますので,必ず専門家に相談するようにしてください。

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