司法書士によるコラム

第14回 「権利証紛失時の代替措置」

 「権利証」と聞けば不動産の所有権を証明する大切なものとして印鑑,預金通帳などとともに金庫に保管されている方も多いのではないでしょうか。一方で不動産取引の事前確認をしていると権利証を紛失したといった相談もしばしばお受けします。

では,そもそもなぜ権利証が必要なのでしょうか?

登記の申請に関しては,法律で添付すべき書類が定められています。
登記の申請については,登記権利者(その登記によって,登記簿上形式的に利益を受ける者)と登記義務者(その登記によって,登記簿上形式的に不利益を受ける者)の共同申請の形が原則となっています。その中でも,登記の対象となる不動産の所有権登記名義人(不動産の持ち主)が登記義務者となる申請をする際には,登記済証(いわゆる権利証)若しくは登記識別情報を法務局に提出しなければならないことになっています。
例えば,不動産の売却や,不動産を担保に金融機関から借入をする際の登記などで必要となります。

法務局に登記の申請がされた場合,登記官は売主,買主などの関係当事者と直接会って意思確認などをするわけではないため,所有者に一番大切な書類を提出させることによって申請する意思が確からしい,という確認をしているのです。

では,権利証(登記識別情報)を失くしてしまった場合,どうすればよいのでしょうか?
法務局で権利証(登記識別情報)の再発行はできません。
この場合の代替手段として,【1】「司法書士等の資格者代理人による本人確認情報の提供制度」【2】「事前通知制度」の二通りの方法があります。
したがって,権利証(登記識別情報)をなくしたからといって,不動産を売却できなくなるわけではありません。

通常,不動産取引は,初対面同士の間で行われるものですし,決済されるお金(動くお金)も数百万,数千万といったかなりの高額なものとなるでしょう。
たとえば売買であれば,売主は登記を買主に移してあげるのと引き換えに代金を受け取れなければ不安ですし,買主も同様,代金を支払う以上,同時に所有権の登記を受けられなければ安心できないでしょう。
平成17年3月7日に現行の不動産登記法が施行される前は,権利証をなくした等の場合の代替手段として,「保証書」という制度がありました。しかし,この制度は権利証以外の必要書類を,一旦,法務局に提出し,その後,売主の元に届いた通知を提出して初めて登記が受け付けられえるというものでした。また,2名の「保証人」を依頼するなどの煩雑さがありました。つまり当事者にとっては足を運ぶ負担が増えたり,さらに通知がいつ売主の元に届くかは郵便事情によるため,通知が届いて初めて代金決済日が決まるといった不便なものでした。
これに対して現行の法律では二通りの代替手段がありますが,このうち「司法書士等の資格者代理人による本人確認情報の提供制度」は,申請代理人である司法書士が登記義務者を確認した旨の書面等を提出することにより,通常の権利証を添付した登記申請と同様,申請時に登記が受け付けられます。つまり従前の「保証書」に比べて,所有権の登記を受けるのと資金決済とを同時に行うことができる点で,格段に当事者にとって利用しやすい制度になりました。

救済策があるとはいっても権利証(登記識別情報)が大切なものであることには変わりありません。

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