司法書士によるコラム
第16回 「相続人の確定と登記実務」
今回のコラムでは,相続人の確定と登記実務についてコメントさせて頂きたいと思います。
司法書士をしていると様々な登記案件に触れる機会がありますが,比較的オーソドックスな相続登記案件として亡くなられた被相続人のご兄弟が相続人となるケースがあります。
このケースの場合,被相続人は未婚でお子様もいらっしゃらず,ご両親は既に他界されていましたので,ご依頼者であるご兄弟からすればご自身が相続人であることは当たり前の事実だと思います。しかし,配偶者を除いて法律上相続人となる者の順番は被相続人の子が第1順位,被相続人の直系尊属が第2順位,被相続人の兄弟姉妹が第3順位ということになりますので,第3順位の兄弟姉妹で登記をするためには子と直系尊属がいないということを書面で法務局に証明しなければなりません。
この法務局への証明をするために戸籍を登記申請書とともに提出しますが,この戸籍の収集に思いがけず手間を要する場合があります。というのも「直系尊属」とは被相続人の「両親」だけでなく「祖父母,曾祖父母…」のことを意味しますので,これらの方の戸籍まで取得が必要となってくるためです。また,調査の結果思いがけない相続人が見つかることもあります。
すこし具体例を見てみましょう。相談にこられたのはBさんです。

まず,Bさんのお話では,被相続人からの遺言はなく,相続人BC間での遺産分割協議は,調っているとのことでした。
被相続人Aさんは未婚でお子様もいらっしゃらず,ご両親は既に他界されているので,ご依頼者であるご兄弟Bさん,Cさんはお二人とも,当然,相続人です。しかし,異母兄弟であるDさんのことが完全に抜け落ちていたのです。
民法第900条(法定相続分)
同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
(1~3号 省略)
4 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の2分の1とし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1とする。
つまり民法の規定では,異母兄弟Dさんも,BやCの『半分』ではありますが相続分があるということです。
そう言えばDさんの存在を亡父から聞かされたような気もします…。
しかし生まれてこの方,全く音信はなく,まさか相続人になるとは夢にも思っておられなかったようです。遺産分割協議は振り出しに戻ってしまいました。
ご依頼頂いた事案は登記完了に至りましたが,相続登記において相続人を確定する作業だけを見てみても専門的な知識による細かな判断が必要となります。
相続財産の権利関係を正しく確定するためにも,相続をされたときはひとまず専門家へのご相談を検討されてみてはいかがでしょうか。
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