司法書士によるコラム
第20回 「相続物件の売買について」
不動産を購入しようと思いましたが,売買契約の締結前に不動産の所有者は死亡しており,相続登記も未了のままでした。不動産取引においては良くある事ですが,注意すべき点はどのようなものがあるのでしょうか?
不動産取引を行う場合,まずその物件の登記簿謄本を取り寄せ権利関係の調査を行います。しかし,登記簿は現在の権利関係を忠実に反映しているとは限りません。相続発生後,遺産分割協議に争いが生じたり,相続人の範囲が未だ確定できずに,相続登記を行わずに登記懈怠となっている事もあるのです。
相続登記未了の場合,戸籍謄本を取り寄せ,被相続人の相続人が誰であるのか相続人の範囲を確定する必要があります。そして相続人が誰であるのか確定したところで相続登記を行い,相続人から買主への所有権移転登記となります。しかし,他いくつかのパターンがありますので,紹介させて頂きます。
(1)第三者への遺言がある場合・・・相続人以外の第三者へ“譲る”旨の遺言がある場合,相続人への相続登記を行わず,売買の前提として,その者(受遺者)への所有権移転登記を行い,その受遺者を売主として取引を行います。
(2)相続放棄をした者が存在する場合・・・相続放棄した者は相続人には該当しない為,相続放棄をした者以外の相続人が売主となります。相続放棄によって,同順位の相続人が存在しなくなった場合は次順位相続人が新たに相続人となります。
(3)遺産分割協議がまとまった場合・・・遺産分割協議によって不動産を取得した相続人へ売買の前提として相続登記を行い,その者を売主として取引を行います。
では,相続人は戸籍で判明したが,相続人の所在がわからない場合は取引できないのでしょうか?所在不明の相続人が有する相続持分を他の相続人が売却する権限は有しませんので,この場合,不在者の財産管理人を家庭裁判所に選任してもらい,不在者の財産管理人が不在者を代理して取引を行う事になります。
最後に所有者が売買契約を締結後,その履行前に死亡してしまったケースはどうなるのでしょうか。この場合,相続人全員が被相続人の権利義務を包括承継していますので,相続放棄をしていない限り,売主の相続人が所有権移転登記義務を履行する形で被相続人から買主への売買による移転登記を行うこととなり,相続人に対して売買の前提として相続登記を行う事はないのです。
このように,不動産取引において,所有者に相続が発生すると権利関係が複雑になり,調査に慎重を要する事も多いのです。しかし,専門家に相談をする事により,取引の安全を担保できますので,相続が絡む場合の取引は,まず専門家に相談を検討してみてはいかがでしょうか。
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