司法書士によるコラム
第5回 「大切な3つの確認」
司法書士の業務上,非常に大切な3つの確認があります。
その3つの確認とは,「人・物・意思」の確認です。
まず,「人」。
これは不動産売買においては売主及び買主の実在性です。当たり前ですが,これを間違えると,法務局に別人名義・虚無人名義の登記を申請することになり,問題です。
ほとんどの不動産立会決済(売主・買主が集まって書類の授受やお金のやり取りがされる場面)において,立ち会う司法書士は売主・買主とは初対面です。この場合,通常は,免許証等の顔写真付きの身分証明書等で確認をしていきます。まず,(1)顔写真をチェック,免許証の写真での顔の判別は正直難しいです。ただ,その免許証を所持していること自体が本人である蓋然性が高いと判断できます。(2)さらに,住所・氏名・生年月日をチェック,移転登記に必要となる住民票や印鑑証明書がありますので,それと見比べて幾重にもチェックができます。(3)それでも本人確認が不十分と感じれば,更に本人ならば応えられるであろう質問をしていきます。
次に,「物」。
これは売買の対象となる土地・建物のことです。実際に物件所在地で立会決済をすることはほとんどありませんので,登記簿謄本や公図で所在や家屋番号を確認していきます。注意を要するのは,道路部分です。家の前面道路を対面の家の所有者と共有している場合,道路部分を売買の対象とするのを忘れてしまうと,その持分を第三者に主張できないだけでなく,使用について紛争が生じる可能性があります。
最後に「意思」です。
実は,これが一番慎重になります。「意思」は目に見えません。
後になって,売る気はなかった,買う気はなかったという場合はほとんどありませんが,問題となるのは,立会決済時に自己の行為の結果を弁識するに足りる精神的な能力,いわゆる意思能力を有するかです。よく,意思能力の不十分な高齢者の不動産を売却してその介護費用や施設入居費用を工面しようとする親族たちからの依頼を受けますが,この場合,処分行為ができるのは,もちろん所有者である本人です。
この場合,立会決済を有効に行うためには,家庭裁判所に対して保佐人・後見人・補助人の選任の請求をし,選任された保佐人・後見人・補助人が本人に代わって立会決済を行う必要があります。また,売却する不動産が本人の居住用の不動産である場合は家庭裁判所の許可が必要になりますので注意が必要です。最近は意思能力の判断をする医師の鑑定書の作成費用も安くなっていますので,どんどん活用すべきです。その後の施設入居契約や介護用品の購入(日用品の購入は除く)の際にも同じ問題が生じるはずですので。
以上の「大切な3つの確認」をするために司法書士は立会決済時にかなり集中しています。無口になって怖い顔をしていても,円滑に決済を進めるためですので優しく見守ってあげてください。
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