司法書士によるコラム
第7回 「権利証がない???」
世の中の流れとともに行政の世界でもどんどんコンピューター化が進んでいます。戸籍・住民表の管理,税務申告等々。不動産登記も例外ではなく,ここ数年で急速にコンピューターが進み,現在すべての法務局で書面申請の他,インターネットによる登記申請もできるシステムになっています。
利用する側にとってもコンピューター処理になったことで様々な変化がありましたが,中でも登記完了後に受け取る書類については劇的な変化がありましたので今回はその事についてお話します。
数年前までは不動産を購入してその登記が完了すると所有権登記済証(いわゆる権利証)という書類が法務局から交付されていました。この書類,水戸黄門の印籠のごとき実にありがたい書類なのです。不動産を売却する場合,この書類をもっていないと不動産の所有権が証明できず,他の方法によってこれを補完しなくてはならないため費用や時間が余計にかかっていました。ところがなんとコンピューター化によりこの権利証交付の制度が廃止されてしまったのです。そして,これに代わり登場したのが登記識別情報制度です。
登記識別情報制度とはどのような制度かと申しますと,登記完了後に登記識別情報通知なる書類(オンライン申請の場合はインターネット上で)が法務局から交付されます。この書類には「登記識別情報」と呼ばれる規則性のない12桁のアルファベットと数字を組み合わせた暗証番号が記載されています。(銀行のキャッシュカードの暗証番号のようなものです)そして,その暗証番号が他人に見られないように上から法務局マークが印刷された専用の目隠しシールが貼られています。このシールは一旦剥がすと二度と貼ることができず自分以外の者が剥がした場合にわかるしくみになっています。
この登記識別情報制度の最大の注意点は従来の権利証のように法務局から交付された書類自体が重要なのではなく,そこに記載された情報(暗証番号)こそが重要だということです。ですから登記識別情報通知取得後不動産を売却する場合,形式を整え,法務局から交付された書類の代わりにノート等の紙片に12桁の登記識別情報を記載したものを提出するとこれで登記ができてしまうのです。コンピューター化により利便性が増した半面,書類の盗難防止に加えて情報漏洩防止の負担も増えたことになります。
最後に既に交付されている権利証の運命ですが,こちらは次に登記を申請してその役割を終えるまで権利証として使用することができますので決して捨てたりしないでください(権利証が生きているかぎり改めて識別情報通知が発行されることはありません)。
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