司法書士によるコラム
第9回 「所有者の会社がない!」
司法書士の仕事をしていると,なかなか巡り合うことができない登記に巡り合うことがあります。
その一つに,「清算結了の登記抹消」→「残余財産の分配」という,商業登記と不動産登記が交り合った登記がありました。
資産家のおばあちゃんが,銀行からの融資を受ける時に,抵当権を設定するという依頼があり,まず不動産の登記簿を見せてもらいました。
甲区一番が資産家のおばあちゃんの保存登記,贈与による移転で甲区二番が○○○株式会社???・・・。
「おばあちゃん,○○株式会社って,何?」と資産家のおばあちゃんに聞いたところ,「私が昔に,経営していた会社で,もう無いよ。」との返答。
「えッ?無いの?」
慌てて,商業登記簿を取り寄せたところ,その会社は,すでに清算結了登記を終えて,存在していない会社でした。
つまり,問題点は,
【1】存在していない会社名義の不動産であるということ。
【2】その不動産を,おばあちゃん名義にしないと,抵当権を設定することはできないということ。(つまり,融資が困難。)
で,まず,考えたのが,清算結了前に不動産を売り渡した事実がなかったかということ。この場合,売買の効力は発生しており,登記義務のみが履行されていない状態ですので,便宜上,清算人だった者とおばあちゃんとの共同申請で,所有権移転登記ができます(昭30.4.14民甲708)。当然,会社の登記を復活させる必要はありません。
しかしそのような事実はない。となれば会社登記の復活。商業登記申請で「清算結了の登記抹消」して,会社登記を復活させました。清算人も選任しました。
次に不動産登記。「残余財産の分配」を原因として,清算人と資産家のおばあちゃんの共同申請で,所有権をおばあちゃんに移転させました。
そして,再び,「清算結了」の登記申請で,再び会社を消滅させる・・・。
かなり大変な登記でした・・・。
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